秋暮

TSUBONIWA STORY 長崎坪庭物語 たたみ一畳ほどの、人を幸せにする庭

秋暮

立冬を過ぎれば、さすがに朝晩の冷え込みが違う。いつも通る道にも、落葉がだんだん増えてきた。毎日のように通っている道の紅葉も、いつこんなに色付いていたのだろう?毎日ちょっとずつ進んでいた季節の変化に、急に気付いて立ち止まる。落葉舞う風が冷たい…とはいえ、まだ微かに日中のあたたかい空気も残る秋の夕暮れ。人が慌ただしく動き始める頃、季節はゆっくり晩秋から初冬へ移り変わります。

今月の坪庭は、ヒラドイトラッキョウ(平戸糸辣韭)と深紅のミヤマラッキョウ(深山辣韭)など晩秋の山野草に、鮮やかな色のスプレーマムやカクテルマムといった花菊が咲く、晩秋から初冬をイメージしたお庭となっております。ヒラドイトラッキョウは、紫苑色の小花に細い茎という繊細な見た目ですが、意外とタフで暑さ寒さにも負けない生命力の強さを持っています。生息地が長崎県の平戸島に限られている為、準絶滅危惧種に指定されている貴重な固有種でもあります。しかし、なぜ平戸島にしか自生していないのかは、まだ謎のようです。そのため、かつては人にあまり知られていない植物でしたが、現在は知名度も高まり、この可憐な小花の群生地への観光ツアーなども開催されるほどになっています。

紫白のバイカラーのスプレーマムや、濃厚な赤紫色のカクテルマムはお庭を明るく彩ります。スプレーマムとは、日本や中国の菊がアメリカで品種改良された種類のことです。海外で作られた種類なので、洋菊とも呼ばれます。日本の落ち着いた色の和菊に比べると、明るく華やかなので、仏花に使われる菊とは全く別物と言って良いほど印象に差があります。スプレーマムは、一本の茎に対して何本も枝分かれしてボリュームのある花を咲かせるので、花が少なくなる時期に彩りを与えてくれる嬉しいお花です。山装う(やまよそおう)時季、日々少しずつ変わる景色に気づけば、深まる秋もより楽しむことができそうです。

スプレーマムの花言葉「高潔」「清らかな愛」「気持ちの探り合い」
ヒラドイトラッキョウの花言葉「つつましいあなた」