秋風

TSUBONIWA STORY 長崎坪庭物語 たたみ一畳ほどの、人を幸せにする庭

秋風

十月半ばなのに、暦上の「寒露(かんろ)」は全然感じられない秋の昼下がり。

さすがに朝晩は過ごしやすくなってきたけれど、日差しは、真夏の蒸し返るような熱気とはまた別の暑さ。10月18日は、二度目のお月見「十三夜」なので、せめて夜風は涼しくあってほしい。意外と忘れられているかもしれない十三夜、十五夜のように満月ではなく、ほんのり欠けているので栗名月や豆名月という美味しそうな名前もついています。

今月の坪庭は、花菊に稲穂のフイリカリヤスやモミジなどが入った秋を感じられるお庭となっております。鮮やかな黄色のイソギク(磯菊)は、日本固有の野生菊で、主に関東地方南部から静岡県辺りの海岸の崖や岩場などに自生しています。海辺の荒れた斜面に分布していることからイソギクという名前が付けられたそうです。お花は、花びらが無い筒状花で束になって咲くので存在感があります。派手なお花ではありませんが、素朴で可愛いお花です。葉は肉厚で波のような切れ込みと葉裏に白い短毛が密生しています。その白い短毛が表にわずかに見えているため、葉の縁取りが白い覆輪のように見えて、良いコントラストになっています。他にも、珍しい形の白い野姫菊も各所に入っており、旧暦の重陽の節句がある今月にふさわしいお庭です。

また、イソギクの近くに入っているフイリカリヤス(斑入り苅安)は、ススキの一種ですが、草丈が通常のススキよりも低く、穂は枝の数が5本前後と少なく、芒(のぎ)がないので、見た目が結構違います。ススキよりも更に線の細いフイリカリヤスは、イソギクとの相性も良く、爽やかに秋の風情を醸し出します。時候は菊花開(きくのはなひらく)、空気が澄み、秋風が心地よい、月も星もより一層美しく輝く、そんな季節に近づく十三夜。

イソギクの花言葉「感謝」「清楚な美しさ」「大切に思う」
※9月9日重陽の節句(菊の節句)…菊には寿命を延ばす力があるとされ、菊を用いて邪気払いをし、無病息災や繁栄・長寿を願う節供のこと。ちなみに、旧暦だと2021年10月14日が重陽の節句にあたります。
※芒(のぎ)…イネ科の植物の穂の先端にある針の様に尖った毛先のこと。