朝春

TSUBONIWA STORY 長崎坪庭物語 たたみ一畳ほどの、人を幸せにする庭

朝春

今朝、遠くの山々がぼんやりして見えた。春はあけぼの…と一瞬思ったけれど、ちょっと違う。だんだん白くなっていく山際というより、ずっと白く霞んでいるから春霞だ。春霞とは響きは綺麗だが、実際に霞ませているのは水蒸気の他に花粉、黄砂、大気汚染物質なども含まれているため、綺麗なものとは言い難い。しかし「朧月夜」や「さくらさくら」のような歌ではその正体はどうであれ、春の風情を感じられる春霞いとをかし。

今月の坪庭は、香り高い花を咲かせる沈丁花(じんちょうげ)やピンク色でくす玉みたいな花形のアルメリア、一つの株に白い小花をたくさんつけるアリッサムなど春の香りが漂うお庭となっております。沈丁花はまだ紅紫色の蕾ですが、開花すると優しい薄桜色の手鞠のような花を咲かせます。夏の梔子(くちなし)や秋の金木犀(きんもくせい)と並ぶ三大香木の一つで、中でも沈丁花は一番遠くまで香りが届くと言われています。その甘い香りに開花が楽しみなお花です。また、アルメリアは一つの花のようで、実は小花の集まりが中心から外へ向かって花開く、くす玉のような姿が可愛いお花です。海浜に自生している為、浜辺に咲く簪のような花という見立てから浜簪(はまかんざし)という和名もあります。言われてみれば、真っ直ぐに伸びた細い茎の先に丸いピンクの小花は、飾りの付いた簪みたいにも見えます。

小さな白花を株いっぱいに咲かせているのはアリッサムです。主役級のお花ではないものの、名脇役のお花として人気があります。ほんのり甘い香りがするアリッサムは暖かくなると絨毯を敷いたように咲き広がるので、花言葉もそんな光景からきているのかもしれません。空気が緩み、あたたかな日差しが景色に色をつけ始める弥生月。沈丁花の香りが漂う頃には、確かな春の足音が聞こえてきそうです。

沈丁花の花言葉「栄光」「永遠」「不滅」
アルメリアの花言葉「心遣い」「思いやり」
アリッサムの花言葉「美しさを超えた価値」「優美」「飛躍」